2026年9月29日
フリーランスの値上げ交渉、正解の例文はない|発注する側から見て話が動きやすい切り口4つ
一人で仕事を受けていて、単価を上げたい。でも、切り出せない。切り出しても、断られる。
そこで「フリーランス 値上げ交渉 例文」「フリーランス 単価交渉」と調べます。出てくるのは、切り出すタイミング、伝え方のコツ、そのまま送れる例文です。
この記事は、反対側から書きます。弊社は、広告の運用や、ホームページ・販売ページを作る会社で、制作の一部をフリーランスや外部の方に発注しています。同時に、弊社自身も、お客さんに値段を提案して、払ってもらう側です。
この記事で「弊社ならこう言う」と書いた一言は、弊社が提案する側として実際に使っているものです。「発注する側から見ると」の所は、頼む側として弊社が見ていることです。
そのうえで、値段の話をどこから始めるか——その入り口を「切り口」と呼んで、四つ並べます。
「こう言えば上がる」という例文は、あるの?
単価を上げる決まった方法は、ありません。こう言えば上がる、という正解の例文も、弊社は持っていません。
結局は、自分の技術を上げることが土台です。ただし、技術が上がるまで値上げの話をしてはいけない、という意味ではありません。その四つが、これです。
- 値段の話の前に、相手の仕事が今どう回っているかを聞く
- 一本いくらではなく、契約の形を変える提案をする
- 断られたら、どこが見合わなかったかを聞く
- しばらく連絡していない相手に、一通送る
それぞれに、弊社が実際に使っている一言と、なぜ話が動くのかを添えます。
値上げを言ったら、切られない?
先に答えます。弊社が頼まなくなるのは、値上げを言われたからではありません。なんとなく微妙で、かつよりよくなる見込みがない、と思えたときです。裏を返すと、微妙でも成長していくと思えるなら、続きます。成果だけで決めてはいません。値上げを口にしたこと自体が、頼まなくなる理由になることはありません。
低単価で疲れていると、「自分はまだスキルが足りないから、この値段で我慢するしかない」と考えてしまうことがあると思います。発注する側として考えていることを、もう少し並べます。
- 少しくらいスキルが足りなくても、応援したいと思うことがあります。教えれば埋まりそうなら、好きな人に頼みます
- 案件によって、見るところが変わります。絶対にミスれない案件なら、すでに実績があり「やっぱりこの人なら間違いないよね」と思える人に。一緒に正解を探っていきたい案件なら、連絡が取りやすく、価値観が合い、知見もある人に
単価は、技術だけで決まってはいません。だから、技術を上げながら、今日から使える切り口があります。
切り口1:値段の話の前に、今どう回っているかを聞く
値上げを切り出すとき、弊社は値段の話から入りません。順に書きます。
① まず、今どう回っているかを聞く
「○○さんの会社のデザインの業務って、今どんな感じで運用されてるんですか?」
「デザイン」は、あなたの仕事の言葉に。「運用」が口に合わなければ、「今どういう形で回していますか」でも構いません。
② もう少し具体的に聞く
「ああ、なるほどですね。ちなみに、どんなお仕事が多いんですか?」
相手の会社がいま、どんな仕事をしているか、という意味です。「最近はどんなお仕事が多いですか」でも同じです。
ほかの外注の話が出てきたら、もう一段深く聞けます。
「外注3社を使っていて、どんな振り分けですか。それぞれの切り分けのポイントは?」
外注の話が出てこなくても、外注があなただけでも構いません。その場合は飛ばして③へ(言い方は④に書きます)。
③ 足りていない役割を聞く
「逆に今、足りていない、こういうポジション・こういう役割の人は足りていない、みたいなのはありますか?」
言いにくければ、「今、手が足りていない所はありますか」でも同じです。
この質問が、いちばん効きます。足りていない役割が見つかれば、そこに自分が入る話ができます。
「今は特に足りてないですね」と言われたら
こう返ってくることはあります。弊社の見方は、こうです。
課題がない会社は、ありません。だから「特に足りていない」と返ってきたときは、相手に何も無いのではなく、まだ聞けていないサインだと受け取ります。責めている話ではありません。弊社は自分たちの側の、ヒアリング不足・信頼不足・コミュニケーション不足のどれかだと見ます。
その場で粘らず、「また何かあれば」と一度引き、次に話すまでに相手の会社をもう少し知る。それが次の一手です。
④ そこに自分が入る提案をする——コストか売上のどちらか
足りていない役割が見つかったら、そこに自分が入る話をします。相手が外注を何社か使っているなら、こう言います。
「外注さんの使い方も含めてご提案できるかなと思いまして」
言ったらすぐに、こう添えます。
「もちろん『乗り換えてください』という話ではなく、私のほうで、その方々とより良く協業できたりとか、そういった形もあると思っていて」
乗り換えを迫っていない、と先に言うためです。
外注が、あなただけの取引先もあります。その場合は、見る範囲を広げます。自分の担当だけで見るか、その会社の仕事全体で見るか、の違いです。
たとえば、こう聞けます(弊社の決まった言い方ではなく、例です)。
「デザイン以外だと、外に出されているお仕事ってありますか?」
「そのあたりも、まとめてこちらで引き受けられるかもしれないと思っていて」
結局は、その会社の仕事のうち、自分がどこまで引き受けられるかです。
どちらの場合も、たいてい「たとえば?」と返ってきます。その答えを先に用意しておきます。
相手の会社にとっての値打ちは、結局、コストの削減か、売上アップにつながることの二つしかありません。中身はケースバイケースで、どちらかに着地すれば何でもいいのです。
型は四つ。相手の会社で何が変わるかで分かれます。
- 払うお金が減る。今のやり方を聞いて、「こうやったら、もっとコスト削減できますよ」と言えるなら、それを言う
- 社内の人の手が空く。あなたが引き受けることで、社内の方が、より注力すべき業務に注力できる
- 払うお金は同じまま、こなせる量が増える。「コストのトータルは変わらないけれど、生産性が上がりますよ」という形。あなたへの支払いが増えても、ほかに払っていた分を引き受けるので、全体では同じ
- 売上が増える。「こういうことをしたら、売上がもっと上がりますよね」が言えるなら、それを言う
2番と3番は、コスト削減にも売上アップにもつながります。四つとも、「あなたへの支払いを減らす」話ではありません。会社全体で見れば、かかるお金が減るか、同じまま量が増えるか、売上が増える。そこに着地します。
相手が気づいていない「そんなことできるんだったら嬉しいわ」を伝えるのも効きます。自分には当たり前でも、相手の会社では誰もできないことが。
発注する側から見ると、値段だけを出されたら、ほかの人の値段と並べて比べることになります。でも、ほかに払っているものも巻き取れる(まとめて引き受けられる)、社内にいい影響も与えられる、という話なら、単なる競合との値段比較ではなくなります。
⑤ 値段は、いつ、どう出すか
金額は、こちらから提案します。相手に予算を聞いて、その中に収めにいくのではありません。ただし、当てずっぽうでもありません。いくらにするかの目星は、ここまでの聞き取りの中でつけます。見ているのは、次の三つのどれかです。
- 相手のお財布事情。その会社が、どれくらい出せそうか
- 相手がいま、その仕事のまわりや似た仕事に、いくら経費をかけているか
- 自分が欲しい金額
二つ目は、金額を聞かなくても見当がつきます。どこに何を出しているかが分かれば、そのまわりにいくらかかっているかは、おおよそ見えます。三つ目は、相手の事情が分からなくても今日決められます。一つ目だけは直接聞けません。ここも、①〜③で聞いた話から見当をつけます。
月額なら、中身の決め方は二通りあります。
- 数で決める。「5万円で、これなら何個分、これなら何個分」を先に決めます。バナーなら何枚、動画なら何本、と置き換えます
- 時間で決める。自分の時給をいくらと置くかを決めて、「何時間分働けますよ」という形にします。月額を自分の時給で割れば、渡せる時間が出ます。この時給に相場はありません。三つ目の「自分が欲しい金額」から、自分で置く数字です
そのうえで、「相場の◯倍」「今の◯%増」のような決まった計算は、ありません。弊社も、正直、なんとなくです。出す形も、一本いくらとは限りません。次の切り口2が、その例です。
⑥ 窓口が、決めるのは上の人、という場合
話す相手が、値段を決める人ではなく担当の方、ということはよくあります。その場合でも進められます。担当の方から、上に提案してもらえばいいからです。伝えるのは二つ。
- その方が、会社から課せられているミッションの達成につながること
- その方の手間や面倒が減ること
「ミッションは何ですか」とは聞けませんが、③で返ってくる困りごとが、たいていそれです。
このどちらかになると、担当の方が上に「これ、良くないですか」と提案してくれます。上で効くのは、④のコストか売上。だから、担当の方のメリットと、会社としてのメリットの両方を伝えます。両方がウィンウィンになることを言うと、上に上げてもらえます。
切り口2:一本いくらではなく、契約の形を変える
弊社が発注と育成で関わった中で、話が動いた例です(過去に、動画制作のフリーランスの育成もしていました)。同じ作業の値段を上げたのではなく、契約の形や引き受ける範囲を変えています。
1枚3,000円のバナーから、月額5万円+超過分は時給へ
1枚3,000円でバナーを作っていたデザイナーが、月額5万円の契約を取りました。段階は踏まず、いきなり5万円です。提案は、この一言でした。
「月額で、稼働時間をいったん決めて、クリエイティブを好きに依頼できる形の契約はどうですか?」
一枚ごとではなく、月にどれくらいの時間を使うかを決めて、その中で制作物(クリエイティブ)を好きに頼んでもらう形です。超えた分は、時給でもらう形にしていました。「好きに依頼できる」は無制限という意味ではありません。
1枚3,000円のころ、月に10枚くらい。月3万円ほどです。そこから月額5万円+超過分は時給になったので、上がった、と言えます。
ただし、この「月10枚くらい」は細かく聞いて数えた数字ではありません。おおよその話なので、「月3万円ほどから月額5万円へ」も、きっちり測った比較ではありません。
もともと月額で受けていた人の例もあります。月額20万円が30万円に。伝えたのは「20万だと、作業で正直いっぱいいっぱいになっちゃう」「30万だと、もっと動けるようになる。追加提案できるようになる」で、返事は普通にOKでした。今の値段でできる範囲を正直に置いて、上げたら何ができるかを並べる、という組み立てです。
なぜ、形を変えると話が動くの?
比べる相手が変わるからです。一枚いくらなら、ほかの人の一枚の値段と比べられます。月額なら、比べる相手は社内の人にやってもらうといくらかかるか、に近くなります。弊社が見ていると、人件費と比べられたときに単価が通ることは、かなり多いです。とくに、まだ答えが決まっておらず、やりながら見つけたい仕事で。
切り口3:断られたら、どこが見合わなかったかを聞く
値上げを断られたら、弊社はお礼を言ってから聞きます。
「ありがとうございます。ちなみに、どのあたりで高いと感じられたか聞いてもいいですか? 競合とかですか?」
「競合」は、あなたと同じような仕事を受けている人や会社のことです。聞きたいのは値段そのものではありません。値段はあくまで一例で、何が見合わなかったのかを知りたい、ということです。相手が何に価値を見出すか(何にお金を払う値打ちがあると思っているか)、何が好きか。そこを探ります。
発注する側から見ると、「高い」は何かと比べたときに出る言葉です。何を重く見るかも、決める人によって違います。何と比べ、何を大事にしていたかが分かれば、次に出す提案の形が変わります。聞けた答えは、書き留めておいてください。
切り口4:しばらく連絡していない相手に、一通送る
ここまでは、今も続いている取引先の話でした。もう一つ、別の相手にできることがあります。依頼が急に止まると、こちらは何か失敗したのかと考えてしまい、連絡もしにくくなります。最初の一通は、こんな感じです。
「お久しぶりです、元気ですか? 最近はこんなことやってます」
「ポートフォリオが増えたので見てください」
どちらにも、値段の話は入っていません。値上げの一言ではなく、値上げの話ができる相手を一人取り戻す、その前の一手です。言葉づかいは、いつものやりとりに合わせてください。
発注する側から見ると、頼まなくなった理由が、ただ忘れているだけのことは、かなりあります。昔お願いして満足度も高かったのに、新しい仕事で思い出さない。たまたま名前が出て「うわ、その人いたじゃん! なんで忘れてたんだろう」となることも、全然あります。しつこいと思われる心配は要りません。思い出せていない相手に、しつこいも何もないからです。
この記事は、どこまでの話?
載せた一言は、弊社が提案する側として実際に使っているものです。金額の例も、実際にあった契約です。ただし、何件のうち何件で話が動いたかは数えていません。「かなり多い」も実感で、同じ一言を言えば同じように動く、とは言えません。
答えていないことが二つ。一つは、いつ切り出すか(何か月続けたら、何年たったら)。この記事は「いつ」ではなく「何から話すか」の話です。
もう一つは、月額5万円の例が「何時間分」で、超過の時給がいくらだったか。弊社は聞いていません。自分の数字は、⑤の二通り(「これなら何個分」か、時給を置いて「何時間分」か)で作ってください。
まとめ:明日やること
単価を上げる決まった方法はありません。土台は自分の技術です。明日やることは、次のどれか一つから。
- 次に取引先と話すとき、値段より先に聞く。「○○さんの会社のデザインの業務って、今どういう形で回していますか?」(「デザイン」はあなたの仕事の言葉に)。続けて「今、手が足りていない所はありますか」
- 「たとえば?」と聞かれたときに言うことを、一つ用意しておく。あなたが引き受けると、相手の会社のコストが下がるか、売上が上がるか。どちらかになる話を書き出します。外注が自分だけなら、担当の外まで見て
- 窓口が担当の方なら、その方のミッションと、手間が減ることも伝える。上に上げてもらうためです
- 一本いくらで受けているなら、月額の形を書き出す。その月額で「これなら何個分」か、自分の時給を置いて「何時間分」か。超えた分をどうするかも
- 断られたら、お礼を言ってから聞く。「ありがとうございます。ちなみに、どのあたりで高いと感じられたか聞いてもいいですか? 競合とかですか?」
- しばらく連絡していない相手を一人思い出して、一通送る。「お久しぶりです、元気ですか? 最近はこんなことやってます」(いちばん今日できるのは、たぶんこれです)
この1〜6は、どれも相手が何と言ったかが手元に残っていることが前提です。どこが足りていないと言ったか。何が見合わなかったと言ったか。その日は覚えていても、次に値段の話をするころには消えています。次の一手を決めるのは、書き留めた相手の言葉。紙のメモで構いません。
その紙を、こちらで1枚にしました。A4・1枚の「商談メモの型」です。上の1〜6と同じ順に、聞くことと、書き留める欄が並んでいます。打ち合わせの前に印刷して、相手が言った言葉をそのまま書き込んでください。2枚目に記入例が付いています。
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