2026年11月4日
USPとは? お客さんが、ほかではなく自分のところを選ぶ理由を一言にしたもの
自宅で教室を開いて、講座を3つ売っている人がいました。
LPを作り直すことになり、一番上に「選ばれる理由」を書こうとしました。出てきたのは「丁寧なサポート」「一人ひとりに寄り添います」「たくさんの受講生を見てきました」。書き終えてから同業のLPを開くと、同じ言葉が並んでいました。消して、書き直して、また消しました。
マーケティングの本には「USPを明確にしましょう」と書いてあります。自分の強みを紙に書き出し、同業のLPを何枚も見比べ、良いところを全部並べてみる。文章を書く人に外注しても、返ってくるのは、どこにでも当てはまる言葉でした。
それでも、個別相談の最後にはこう言われます。
「ほかにもいくつか話を聞いてから決めます」
値段や知名度で比べられるより、「この人に頼みたい」と思って来てもらうほうが、売る側も買う側も気持ちいいですよね。その「この人に頼みたい」の中身を、一言にしたものがUSPです。
USPとは? 何の略で、ひと言でいうと何のこと?
USPは、Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)の略です。日本語では「独自の売り」と訳されることが多い言葉です。
ひと言でいうと、お客さんが、ほかではなく自分のところを選ぶ理由を、一言で言えるようにしたものです。
Proposition は「申し出」「約束」という意味です。だからUSPは、「うちはこれが得意です」という自己紹介ではなく、「あなたにこれを約束します」という申し出の形をとります。
言葉を広めたのは、アメリカの広告マン、ロッサー・リーブスです。彼が手がけたチョコレートの「M&M's」の広告は、日本でも「お口でとろけて、手にとけない」として知られています。チョコレートは手で持つと溶けてべたつく。それを嫌う人に、「これなら手が汚れない」と約束した一言です。
「強み」や「売り」、キャッチコピーとは何が違うの?
強みは「自分が得意なこと」。USPは、その強みを「相手が選ぶ理由」に置き直したものです。
USPと呼べるのは、次の条件がそろっているときです。
- 相手が欲しい結果につながっている(自分が誇りたいことではなく、相手が手に入れたいこと)
- 同業が看板にしていない(LPやプロフィールの一番上で、同業が言っていない)
- 約束の形になっている(「〜できます」「〜になります」と、相手に何が起きるかを言っている)
たとえば「指導歴10年」は強みです。ただ、相手が欲しいのは10年という年数ではありません。同業にも10年の人はいます。そして、相手に何が起きるかを言っていません。どの条件も満たしていないので、USPにはなっていません。
USPは「なぜ選ぶか」の中身で、キャッチコピーはその中身を覚えてもらうための言い方です。M&M's なら、「手が汚れない」が中身で、「お口でとろけて、手にとけない」が言い方です。言い方を変えても残るほうがUSPです。中身が1つでも、言い方はLP用、SNS用、メルマガの件名用と、何本でも書けます。
M&M's の一言を分けると、こうなります。
- 誰に:チョコを食べたいが、手がべたつくのは嫌な人に
- 何が手に入るか:手を汚さずに食べられる
- 同業と何が違ったか:ほかのチョコは、手で持つと溶けた。M&M's は、チョコを砂糖の殻で包んでいた
殻のあるチョコは、それだけでは「得意なこと」です。「手がべたつくのは嫌な人」に向けたとたん、ほかのチョコが言えない約束になりました。
講座やコンサル、小さなお店だと、何がUSPになるの?
小さな商売なら、「◯◯な人のための、◯◯」の形にすると作りやすくなります。前の◯◯が「誰に」、後ろの◯◯が「何が手に入るか」です。後ろの◯◯に、同業が言っていないことを選べば、「同業と何が違うか」も文の中に入ります。
- 講座:「人前で話すのが苦手な人のための、自分が話さなくても申し込みが来るLPの書き方講座」
- コンサル:「オーナーが毎日現場に立っている美容室のための、お店に立ったまま続けられる集客の相談」
- 整体:「デスクワークで腕が上がらない人のための、その場で上がり方を確かめてから通うか決められる整体」
- 飲食店:「小さな子ども連れの家族のための、まわりに気をつかわずに食べられる定食屋」
整体の例なら、同業の看板に並ぶのは「丁寧な施術」「根本から改善」です。「通うか決める前に、その場で確かめられる」は、そこに無い約束です。
どれも、腕前を誇る言葉は1つも入っていません。そのかわり、誰に向けているかがはっきりしています。読んだ人は、自分が当てはまるかどうかが一瞬で分かります。当てはまる人にとっては、ほかの店と比べる前に「ここは自分のための店だ」と思える一言になります。
周りと似たようなサービスで、特別な実績も無い。それでもUSPは作れるの?
作れます。「USPがない」と感じるのは、強みが足りないからではなく、全員に向けて言おうとしているからです。
講座を5つ持っていて、全部を1枚のLPで案内していた人がいました。文章の講座、SNSの講座、話し方の講座、写真の講座、AIの使い方の講座。どれも中身は悪くありません。LPの一番上には「あなたの発信を、まるごとサポートします」。
読んだ人の反応は「で、結局、何の人なんですか?」でした。
その人は、まだ強みが足りないのだと思って、探しに行きました。けれど、足りなかったのは強みではありません。5つの講座を、誰に向けて言うかを決めていなかったのです。
ラーメンもパスタもピザもカレーも出す店と、豚骨ラーメンだけの店があったら、豚骨ラーメンを食べたい日に入るのは後者です。前者のほうが作れるものは多い。それでも選ばれるのは、一点に絞った店です。メニューが少ないから選ばれたのではありません。看板を見た瞬間に「今日の自分のための店だ」と分かるから選ばれます。
家からいちばん近いパン屋も同じです。味で日本一ではなくても、毎朝そこを通る人にとっては一番です。選ばれる理由は「近い」で、これは腕前ではありません。その人にとって、という条件が付いたとたんに、ふつうのことが選ぶ理由に変わります。
実績も同じです。比べられる相手は、業界の有名な人ではありません。お客さんが実際に見比べている、数軒の同業です。その数軒が言っていないことを、その人に向けて約束できれば、それがUSPです。
絞ったら、それ以外のお客さんは来なくなるんじゃないの?
絞るのは、看板に書く一言です。来ていい相手を減らすのではありません。
「豚骨」と大きく書いた店にも、友達に連れられて、豚骨は初めてという人が入ってきます。看板は、入ってくる人を選別する門ではなく、遠くから「自分のための店だ」と気づいてもらう目印です。
全員に向けた一言は、誰にも「自分のことだ」と思われません。「あなたの発信を、まるごとサポートします」は、誰も追い払っていない代わりに、誰も呼び止めていません。
それに、絞るのはLPやプロフィールの一番上の一言だけです。講座を5つ持っているなら、5つとも売り続ければいい。入口の一言を1つの相手に向け、来てくれた人に、ほかの講座も案内すればいいのです。
自分のUSPは、どうやって見つければいいの?
自分の頭の中ではなく、お客さんの口から探します。
自分で強みを書き出すと、「丁寧」「親身」「経験がある」が出てきます。どれも本当のことですが、同業も全員書いている言葉です。
お客さんは、ほかと比べたうえで、こちらを選んでいます。だから、選んだ理由は、お客さんがもう知っています。聞いてみると、思ってもいなかった答えが返ってくることがよくあります。腕前を褒められると思っていたら、「返事が早かったから」「説明に専門用語が無かったから」と言われる。それが、相手にとっての選ぶ理由です。
返ってきた言葉は、同業のLP数枚と並べて見ます。同業も書いている言葉は消します。同業を見るのは、言うことを探すためではなく、消すためです。消したあとに残った言葉が、「同業と何が違うか」を持った言葉です。
残った言葉が、「何が手に入るか」の材料です。言い換えるときは、お客さんが言った範囲を超えないようにします。「返事が早かったから」なら、「返事が早い」のまま使えば十分です。それを言った人がどんな人だったかが「誰に」です。年齢や職業より、そのとき何に困っていたかで書きます(「平日は会社にいて、夜しか連絡できない人」のように)。お客さんの口から出た言葉なので、少なくとも1人は、それで実際に買ってくれています。
答えが「丁寧だったから」だけのこともあります。そのときは、もう一つだけ聞きます。「丁寧だと思ったのは、どんな場面でしたか?」。「申し込む前の細かい質問に、全部答えてもらえた」と返ってきたら、それが材料です。「丁寧」は消えても、場面は残ります。
残った言葉がいくつもあって、どれを一番に言うか迷ったときの選び方は、キャッチコピーの記事に書いています。
見つけたUSPは、LPやSNS、個別相談のどこで言えばいいの?
相手が最初に目にする場所の、一番上に置きます。
- LPの一番上(開いてすぐ見える範囲)
- SNSのプロフィールの一行目
- 個別相談の冒頭の自己紹介
- メールの署名や名刺
言い方は場所ごとに変えてよく、変えないのは誰に何を約束するかです。あちこちで違うことを言うと、相手の頭の中には何も残りません。
効いているかどうかは、お客さんが、こちらの言った一言を、自分の口で言い返してくるかで分かります。問い合わせに「◯◯な人向けと書いてあったので」と書いてくる。個別相談で「ここなら△△できると思って」と言われる。相手がこちらの言葉を使って選んだ理由を話しはじめたら、USPが届いています。
反対に、「ほかにもいくつか話を聞いてから決めます」が続くなら、相手の頭に、比べるときに残る一言がまだ届いていません。
USPを、LPの本文や投稿の文章にどうつなげていくかは、こちらにまとめています。
明日やること:最近のお客さん3人に「なんでうちにしたんですか?」と聞く
1. 最近買ってくれたお客さんを3人選ぶ
紹介してくれた人でもよい。長く通ってくれている人より、最近決めてくれた人のほうが、比べたときのことをよく覚えています。最近の人が3人いなければ、さかのぼって、決めてくれた日が新しい順に選びます。
2. 売り込まずに聞く
「今後の参考にしたいので、もしよければ教えてください。ほかにも選択肢があったと思うんですが、なんでうちにしたんですか?」。答えは、言われたとおりに書き留めます。きれいな言葉に直しません。「丁寧だったから」だけなら、その場で場面を一つ聞き足します。
3. 1つに決める
同業のLPにも書いてある言葉を消して、残った中から選びます。2人以上が近いことを言っていたら、それが最初の候補です。3人ともばらばらなら、これからいちばん増やしたいお客さんに近い人の言葉を選びます。
4. 「◯◯な人のための、◯◯」に入れて、LPやプロフィールの一番上に置く
答えの整理に迷ったら、ChatGPT などのAIに、下の文をそのまま貼ります。
自分は(講座・サービス・お店の内容)をしています。
最近のお客さん3人に「ほかにも選択肢があったと思うんですが、なんでうちにしたんですか?」と聞いた答えは、下のとおりです。
Aさん(どんな人か:例「平日は会社員で、週末だけ教室に通いたい人」)
答え:(例「説明に専門用語が無くて、自分でもできそうだと思った」)
Bさん(どんな人か: )
答え:( )
Cさん(どんな人か: )
答え:( )
同業のLPの一番上に書いてある言葉(分かる範囲で):( )
これからいちばん増やしたいお客さん:( )
① 答えの中から、同業がよく言う言葉(丁寧・親身・実績・安心など)と、上の同業のLPにある言葉を除いてください。
② 残った理由の中から、1つ選んでください。2人以上が近いことを言っていれば、それを優先してください。3人ともばらばらなら、上の「これからいちばん増やしたいお客さん」に近い人の答えを選んでください。
③ それを『◯◯な人のための、◯◯』の形で3案出してください。◯◯な人は、上の「どんな人か」から、そのとき何に困っていたかで書いてください。
条件:「No.1」「業界初」のような、確かめられない言葉は使わないでください。いまの一行(LPやSNSのプロフィールなどで使っている紹介の一文)と、最近のお客さんが「なぜうちにしたか」に答えた言葉を送っていただければ、どこを絞るとよいかと、言い直した一行の案を、無料でお返しします。お客さんの答えは、1人分だけでも構いません。
返事はメールでお送りします。弊社からお電話することはありません。
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